モスクワ便り
皆さま、師走に入りお忙しい日々をお過ごしのことと思います。
今年は冬将軍の訪れが早く、モスクワの気温は11月末に既に−14℃になっていました。晴れた日には空が白むほどに冷え、ロシアの大地は長い冬を迎えています。
今日は、私が「レクチャー&コンサート」をさせていただいた、モスクワ市立「インテルナート」という小・中・高の一貫校のことを書かせていただきます。
現在この学校には、軽度〜中度の視覚障害がある生徒たち125名が学んでいます。基本は全寮制で、月曜〜木曜まで寄宿舎で過ごし、週末は家族と一緒に過ごすそうです。校内は生徒たちが学習しやすいように工夫されていて、例えば図書室には、本を閲覧する際に細かい字を拡大できる機器が置かれていました。また、医師と看護士,栄養士が常駐し、生徒たちの健康管理を行っているそうです。
そして特筆すべきは、学校内博物館があることです。「伝統的な暮らし方」という名のこの博物館の館長は、Tamara Ponomarevaさん。穏やかな笑顔と凛とした立ち姿がとても美しい女性です。彼女は大の日本好きで、博物館の中の一角には日本コーナーがありました。
今回の受講生は小学3年生から高校2年生までの約30人。日本について学んでいる学生たちです。彼らは、本やインターネットで得ている日本についての知識と、生(なま)日本人?が話す日本との違いを真剣な面持ちで聴き入っていました。
私が選んだテーマは、「日本の里山の四季」。里山の四季は美しいだけでなく、人々の暮らしと密接に結びつき、今もなお日本人の生活様式や心の持ち方に深く関係しています。私は、自然の様や遊びや仕事を歌った叙情歌や童謡と共にとある村の四季の映像を紹介しながら、約一時間の「レクチャー&コンサート」を行いました。生徒たちは、絵画の一部を切り取ったような美しい姿の日本はよく知っていましたが、暮らしに根づく日本の姿は初めて見たようです。
アンコールで歌った「ふるさと」。どこかで耳にしたことがあるのでしょうか? 皆が一緒にハミングしてくれました。
「耳を澄ませ自然の営みに心を傾ければ、そこには時の息吹きがゆっくりと起ち上がってくる...」
お礼にと、素晴らしいショパンを披露してくれたイワン君の言葉がとても印象的でした。
平岡 貴子